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社会契約論/ジュネーヴ草稿 [哲学 ルソー]


社会契約論/ジュネーヴ草稿 (光文社古典新訳文庫)

社会契約論/ジュネーヴ草稿 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Kindle版



ひさしぶりに、ルソーの作品を読んだ。
数年前に、『新エロイーズ』を読んで以来だ。
『エミール』『新エロイーズ』そしてこの『社会契約論』と彼の作品は読んできたが、どれもものすごく面白いわけではないが、思想に共感できる部分が非常に多い。さすが、フランス革命の理論的バックボーンになっただけある。どうしたらこれほど、平等で真摯な観点で物事を見られるようになるのか、と感心してしまう。とにかく素晴らしい言葉が散りばめられている。
ちなみに、この本は「社会契約論」と「ジュネーヴ草稿」の2作品が収められているが、後者は前者の前段階の第一稿のようなもので、内容はかなり重なっている。

「社会契約論」
p.26
「だから力は権利を作りださないこと、わたしたちには、正当な権力以外のものには服従する義務はないことを認めよう。」

我々は自由であり、お互いの平等な契約を結んだものに対してしか服従する必要はなく、権力者などそもそもこの世には存在しないのだ。

p.34
「戦争の結果として生まれた奴隷や、征服された住民は、強制されているうちは主人に服従するだろうが、主人にはいかなる〈義務〉も負わないことを指摘しておきたい。勝者は敗者の生命を奪う代わりに服従させたのであり、いかなる恩恵もほどこしたわけではない。~中略~それ以前と同じように勝者と敗者のあいだには戦争状態がつづいているのである。」

これは非常に新しい観点だった。戦争に負けたら捕虜になったり、従わされたりすることに非常に違和感がずっとあったのだが、ルソーの言うとおりなのだ。国家と国家の戦争であり、戦争で負けたからといって個人一人ひとりの自由に生きる権利が剥奪されること自体がおかしいのだ。これは世界中で共有されるべき考えであろう。

p.56
「この[社会契約という]基本的な契約は、自然の平等を破壊するものではなく、自然が人間にもたらすことのある自然の不平等の代わりに、道徳的および法律的な平等を確立するものだということである。人間は体力や才能では不平等でありうるが、取り決めと権利によってすべて平等になるのである。」

これは、非常にすばらしい考えだ。アマルティア・センの本で、「平等」について最近考えていた分、かなり心に残る一文だった。

p.65
「人民が十分な情報をもって議論を尽くし、たがいに前もって根回ししていなければ、わずかな意見の違いが多く集まって、そこに一般意志が生まれるのであり、その決議はつねに良いものであるだろう。しかし、人々が徒党を組み、この部分的な結社が[政治体という]大きな結社を犠牲にするときには、こうした結社の成員にとっては一般意志であろうが、国家にとっては個別意思となる。その場合には、成員の数だけの投票が行われるのではなく、結社の数だけの投票が行われるにすぎないのである。」

まさに、今の日本の政党政治批判そのものである。一人ひとりが全体の善を考え、一人ひとりの意見を出し合って話し合えば、自然と素晴らしい結論に達するのである。これはかなりの性善説にたっているが、私も全く同じ考えだ。結局団体、組織を結成するところから人々は思想は腐っていくのである。

p.109
「立法という仕事で困難なのは、何を作り出すかではなく、何を破壊すべきかを判断することにある。」

これも非常に示唆に富んでいる。
くだらない伝統にしがみつき、中身のないものにくだらない人々は固執するものなのだ。

p.110
「あらゆる立法の体型は、すべての人々の最大の幸福を目的とすべきであるが、この最大の幸福とは正確には何を意味するかを探ってゆくと、~中略~自由と平等に帰着することがわかる。」

私も小さい頃からこの二つを常に目指してきたし、今も目指している。これこそ人類が目指すべき目標なのではないだろうか。

p.136
「法律を作るものが、法律を執行することは好ましくない。人民という団体が、一般的な目的から注意を逸らせて、特殊な事柄に注目することは好ましくないからである。」

結局システムを作り、それを動かさせようとすると、それを動かす人間の私的な欲求が入り込み、組織は腐っていく。本当の意味での三権分立を目指すべきなのかもしれないが、わたしにはこの部分はよくわからない。

p.149
「共和制においては人民の声が働くために、その地位を立派にはたすにふさわしい見識と能力のある人物でなければ、高位の地位につくことはほとんどない。しかし君主制において出世する人物は多くの場合、ちっぽけな間抜け、ちっぽけな詐欺師、ちっぽけな陰謀家だけであり、小才を働かせることで宮廷で高位に昇りつめることがあっても、顕職に就くとその無能がすぐに公衆に暴露されるのである。」

しかし暴露されてもやめさせられることなく、こういったくだらない連中は権力を行使し続ける。だから組織がダメになるのだ。

p.152
「他人に命令するよう育てられた人をみると、その人が正義感と理性を喪失してしまうべく、すべてのことが力を合わせているかに見える。~中略~王子たちにはまず服従することから教えるべきだろう。」

私の働く組織のトップがまさにこのような人物だ。世襲によってトップに上り詰め、正義感も理性もなく、自分が正しいと思った頭の悪い考えを人々に押し付け続けているのである。

p.201
「執行権を委ねられた人々は、決して人民の主人ではなく、その公僕であること」

日本の政治家に伝えてあげたい言葉である。


「ジュネーヴ草稿」
p.322
「人間は自由なものとして生まれたのに、いたるところで鎖につながれている。自分が他人の主人であると思い込んでいる人も、じつはその人々よりもさらに奴隷なのである。」

結局人々を使役して生きている人は、自分の力で生きて行けず、自由がない奴隷状態なのだ。


非常に素晴らしい言葉の数々だった。
全体として面白いとはやはり言えないが、とてもためになる本ではあった。

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