みかづき [文学 日本 森絵都]
私はひとりの作家を集中的に読む習性があり、森絵都作品で良い作品がないか探していたところ、結構面白そうだったので読んでみた。
戦後から平成末期までの期間、個人塾から始まり、規模を拡大させて進学塾となり、最終的には公教育で、土曜日に授業を担うようになった一家の3代にわたる物語。
戦後の教育の流れ、塾との関係性、どのような裏の目的があってその政策がなされてきたのかなどが結構わかりやすく描かれている。
本質的に学ぶとはなんなのか、生徒の内なるやる気を引き出すことが教育であり、すぐに結果のでない本質的に考える力を引き出すことこそが教育なんだという信念の元行動する人物が描かれている。成果主義との対立が常にテーマとしてあり、そのせめぎ合いを様々な人物の対立等で描き出しているのは本当にうまいと思う。
非常に印象に残った一節
p.592
「教育は、こどもをコントロールするためにあるんじゃない。不条理に抗う力、たやすくコントロールされないための力をさずけるためにあるんだー。
途中、若干集中力を切らす時もあったが基本的に楽しく読めた。こういう大河ドラマ的小説はあまり好きではないのだが、テーマが教育だけに結構面白かった。
森絵都は公教育の中で生きづらさを感じていて、常に、学ぶとは何か、ということを考えて生きてきたんだろうなあ、と今まで読んだ数作品を通じて思った。
2021-09-17 04:52
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