おしょりん [文学 日本 藤岡陽子]
福井県の生野に住む、増永五左衛門が妻むめと、眼鏡工場を作り、発展させていく物語。一応実話らしく、どこまでが実話でどこまでがフィクションかはよくわからない。藤岡陽子特有の涙が止まらなくなるような感動的な場面はないが、しっとりとした味わい深い作品ではある。
だが、わたしはこういう歴史ものがあまり好きではないので、彼女のほか作品程、その世界に入り込んで楽しむというふうにはなれなかった。
妻むめと、五左衛門の弟幸八の淡い恋も少し入っており、この辺が物語にアクセントつけているが、これがなかったら結構読み進めるのが難しい本だったかもしれない。
p174
「ほやけどな兄さん、最後の最後は心のある人間が手掛ける商いだけが生き残るんや」
これはとても良い言葉だと思う。そして、これも実話らしいが、工場の職人に仕事が終わったあと、工場の二回で教育を施していたというのは素晴らしい。
小説として、凄い面白い作品というわけではないが、父の実家が福井県である自分としてはそれなりに楽しめないことはなかった。
2022-03-06 07:57
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