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刺繍する少女 短編⑤ [文学 日本 小川洋子 短編]


刺繍する少女 (角川文庫)

刺繍する少女 (角川文庫)

  • 作者: 洋子, 小川
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店
  • 発売日: 1999/08/24
  • メディア: 文庫



01. 刺繍する少女
02. 森の奥で燃えるもの
03. 美少女コンテスト
04. ケーキのかけら
05. 図鑑
06. アリア
07. キリンの解剖
08. ハウス・クリーニングの世界
09. トランジット
10. 第三火曜日の発作

01はタイトル作品。ホスピスで死を待つ母親の世話をする中で、出会った刺繍をする少女。彼女は昔自分の別荘のとなりに住んでいた喘息持ちの女の子だった。何年も経った後も同じように彼女は静かに刺繍をしていた。そして母親が死んだ日も、彼女のことが気になってしまう自分がいた、という話。淡々としているが、こういう感覚あるよな、と思わせる作品。

02は完全にナチス・ドイツの収容所を意識した作品。恐ろしい収容所ではなく、普通の場所のように「収容所」を描いているところがかえって恐ろしさを演出している。

03はふとしたことから「美少女コンテスト」に出させられてしまった女の子の話。これもありえない話なのでが、こういうことあるよね、と思ってしまうところが不思議。

04はとても恐ろしい話。自分がどこかの国のお姫様だと思い込んだ女性の話で、最後は毒殺めいたことも出てくる。結末がよくわからないがなんとなく恐ろしい。

05も恐ろしい。不倫している男女の女性の視点から描かれて作品で、結末は谷崎潤一郎の『春琴抄』。

06は昔オペラ歌手としてイギリス留学していた叔母さんが、夢やぶれ日本に戻り、化粧品を売って生活している。そのおばさんの誕生日を祝いに、毎年2月12日に訪れる独身男性の視点で描いた作品。この短編集の中では心暖まる作品になっている。

07は堕胎手術を受けた女性の話。何故堕胎しなければならなかったのかは全く書かれていないのだが、それが描かれていないことによってかえって女性の悔しさがにじみ出てきている作品。結構しんみりとした良い作品だ。

08はすこしマゾヒスティックな作品。若干苦手な分野かも・・・。

09も、ナチスの強制収容所に関係する話。強制収容所を生き抜いたフランス系ユダヤ人を祖父に持つ女性の話。小川洋子の『アンネ・フランクの記憶』を先に読んでいたので、楽しみが倍増した。恐ろしい話なのだが、これも少し心暖まる。

10も喘息の少女の話。性愛描写などもあり、結構ひき込まれる。

喘息で始まり喘息で終わる。短編集。恐ろしい話と優しい話が織り交ぜられておりそれなりに楽しめる。
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