科学の扉をノックする エッセイ⑧ [文学 日本 小川洋子 エッセイ]
小川洋子さんが、自分の興味ある分野の科学者たちの話を聞きに行って、その内容を文章にまとめたもの。
宇宙、鉱物、DNA、光、粘菌、遺体科学、スポーツ・トレーナーなど、かなり専門的な話なのだが、素人の小川洋子さんに易しく噛み砕いて説明し、それをさらに小川洋子さんの言葉で書き直したものなので、かなりわかりやすくなっている。
さいごの「あとがき」の一節が非常に印象的だった。
pp.195~196
「取材を終え私が一番に思うのは、皆さんが奉仕の心を持っておられたことです。目に見えない何か、自分より偉大な何かに対し、戦いを挑むのではなく、謙虚な心で奉仕する。その心がいつも私を感動させました。」
p.199
「本書のスタート時には、科学の分野の興味深い研究内容を紹介しようという試みがあったのは事実ですが、取材を重ねてゆくうち、自分が本当に伝えたいのは、その研究に打ち込む人間の姿なのだと気づきました。題材がなんであれ、作家はやはり人間を書くのが仕事です。」
この本を読んで改めて、自分は物語のある文章が好きなんだなあ、と思った。
科学に興味をもつきっかけとして素晴らしい本だと思う。
2022-08-28 13:38
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