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風野又三郎 [文学 日本 宮沢賢治 か行]


ポラーノの広場 (新潮文庫)

ポラーノの広場 (新潮文庫)

  • 作者: 賢治, 宮沢
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1995/01/30
  • メディア: 文庫



有名な「風の又三郎」の初稿というのか、初期作品。これをもとに現在流布しているものができたらしい。「風の又三郎」では、転校生が本当に教室にやってきて、先生が皆に紹介し、皆が三郎を勝手に「風の又三郎」と読んでいるのに対し、この初稿「風野又三郎」では、教室に現れた又三郎を先生は見ることが出来ず、子供達とだけ会話したり遊んだりする。

この初稿の方が、緊張感もありストーリー展開も自然で読みやすい。後半部の又三郎が北極から日本まで旅してくる描写は若干冗長。

流布している稿では誰にも挨拶せずに遠くへ行ってしまう三郎だが、この初稿では最後、一郎に挨拶をして終わるところが良かった。

「風の又三郎」は全く傑作だとは思わないが、こちらの作品は悪くなかった。

p.104
「お前たちはだめだねえ。なぜ人のことをうらやましがるんだい。僕だってつらいことはいくらもあるんだい。お前たちにもいいことはたくさんあるんだい。僕は自分のことは一向かんがえもしないで人のことばかりうらやんだり馬鹿にしているやつらを一番いやなんだぜ。僕たちの方ではね、自分を外(ほか)のものとくらべることが一番はずかしいことになっているんだ。僕たちはみんな一人一人なんだよ。」

宮沢賢治の思想がきゅっと詰まった一節だと思う。なかなかこのようには生きられないが、このように生きたいとは思う。
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