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テアイテトス [哲学 プラトン]


テアイテトス (岩波文庫)

テアイテトス (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2014/12/17
  • メディア: 文庫



プラトン全集〈2〉 (1974年)

プラトン全集〈2〉 (1974年)

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: -



『テアイテトス』ー知識についてー、という副題がついており、「個々の人間の知覚こそ、真理の基準であり、絶対的な真理は存在しない」という意味であると考えられている、ソフィストのプロタゴラスが言ったとされる「万物の尺度は人間である」という考え方を対話を通して否定しようとした作品。

プラトンは、イデア論で有名であり、その思想からわかるように、絶対的な真理というものがあり、そのイデアを分有しているのが、この世で感覚されているものなのだ、という考えを持っていた人で、まさにプロタゴラスと正反対の考えを持っていた。

ソクラテスが亡くなった後、エウクレイデスという人とテルプシオンという人が、死んでしまったソクラテスを思いだし、彼が死ぬ前に行ったとされる対話を書き残したものがある、というのでその書物を読んでいるという設定になっている。

ソクラテスの対話相手は基本的に若いテアイテトスがつとめており、そこからこの対話篇の題名は取られている。

初めは、プロタゴラスの「万物の尺度は人間である」という言葉に沿って、知識とは何か、ということを考える。テアイテトスは「知識=感覚」と答えるのだが、その考えを、ソクラテスが巧妙に論理的に論破して行く。

最終的に、「正しい思いなしに言論の加わったものが知識であり、さらにさらにその言語化したものの背後にある行程も知識であり、そのものとそのものではない他の物との違いこそが知識である」と定義しようとするのだが、それでもやっぱり定義しきれない。

つまり、結局人は知識というものを定義しきれない。だから、「知らないものを知っていると思ったりしないだけの思慮深さ」つまり「無知の知」こそが重要なのだ、という結論に達する。

かなり、複雑な対話で論理を追うのがしんどいし、その論理を人に説明するのは不可能に近いのだが、ゆっくりこの対話と向き合うだけでも、頭の体操にもなるし、物事に対して真摯に向き合う姿勢が大切だということを思わせてくれる。

大学時代に読んだ時も難しいと思い、どんな話だったか印象の薄い本だったのだが、今回再読(4回目)してみてその理由が改めてわかった。

p.283
「真の意味の自由と時間の余裕とをもって。その中に育てられた人の流儀なのでして、こういう人こそあなたは好学求知の士と呼ばれることでしょう。かかる人にあっては、かかる人にあっては、たとえば夜具類の荷ごしらえをどうするか知らないとか、うまいお菜を作ったり、うまいお世辞を言ったりすることを知らないとかいうふうで、奴隷奉公の仕事に当っては、のろまであるとか無能であるとか思われることがあっても、それはべつに落ち度にはならないのです。」

p.318
「したがって、かの[身体を通して]受け取られるだけのものの中には知識は存しないわけなのだ。むしろそれらについての思量(勘考)の中に知識があるのだ。」

ここに、イデア論の萌芽が見て取れる。

かなり頭を使う本ではあったが、面白かった。
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