谷間の百合 [文学 フランス]
同僚から、バルザックの作品は面白い、と言われたのもあるし、結構色んなところで『ゴリオ爺さん』が言及されているのもあり、新潮文庫から出ているバルザック作品『ゴリオ爺さん』と『谷間の百合』を購入した。
まずは、どちらかというとマイナーな『谷間の百合』を読んでみた。
色んな本を読んでいるし、哲学書も何冊も読んでいるのだが、とにかく段落分けの少なさに驚いた。哲学書や学術書であればそれなりに覚悟して読み始めるのでまだ、良いのだが、一応小説ということで、会話文などもあるだろうし、ある程度読みやすいだろう、という先入観もあるのが悪かったのと思うのだが、とにかく会話文が少ない。
主人公の男性、フェリックスが、現在の恋人ナタリーに、「昔の恋の思い出」を手紙にして送ったその手紙という体をとっているからなのか、とにかく自然描写や自分の当時の内面などが綿密に詳細に綴られており、時に哲学的な考察なども入ってくるので結構読みすすすめるのに苦労する。
あとがきにもあるのだが、同じフランス文学、ラ・ファイエット夫人著『クレーブの奥方』、ルソー著『新エロイーズ』に通じる、許されぬ恋をし、そのまま肉体関係にいたらずプラトニックな関係を続けることによる悲劇という感じの書。
ドロドロした恋愛小説や、無意味な性描写が多い小説を好まない私としては、こういった類の小説は好みに合っているはずなのだが、結構どれも読み進めるのが辛い。今回もかなり苦戦した。
前半部の、青年フェリックスが美しいモルソフ伯爵夫人に恋をし、距離を縮めながらもなかなか相手の心に入り込めない箇所や、モルソフ夫人を愛しながらも、ほかの女性と肉体関係を結んでしまうあたりなど、読んでいて一番楽しいはずの部分が何故か結構苦痛だった。
しかし、後半のモルソフ夫人が、フェリックスが悶々としていた時期、どういう想いで生きていたのかが明かされる後半の手紙部分が圧巻で、このあたりから一気に面白くなる。前半部のもやっとしている部分があるからこそ、後半部の真実が見える部分が生きるのであろうが、何しろ辛かった。
もう一度是非読みたい、という類の本ではないが、結果としてはそれなりに楽しめた。
2023-05-11 03:27
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