てまり [文学 日本 安房直子 た行]
お屋敷のお座敷の奥でお姫様が泣き叫んでいる。遊び友達のふたりの女の子がはしかにかかってしまい一人ぼっちになってしまったのだ。
泣きながらこの間見た夢のことを思い出していると、庭の方から「あんた、どうして泣いてるの」という声が聞こえる。見ると一人の女の子が立っている。そこでこっちへ来るよう言うと、てまりを持ってやってくる。中に鈴が入ったおばあさんお手製のてまりだった。そのてまりをたもとに入れると、機織りをしている女性の姿が見える。
てまりで遊んだ後ふたたびたもとにいれて覗き込むと、今度は菜の花畑が見える。
女の子はかつて夢を見たことがあった。
「あしたてんきになあれ」と下駄を飛ばしていたらその下駄が飛んでいってしまい探していたところ菜の花畑が目の前に広がる。下駄は見つからず諦めて帰ろうとしたところ、綺麗な鈴がついたぽっくりが上から降ってくる。そのぽっくりをさがす声が聞こえてくるが、鈴があまりにも綺麗だったのでその鈴を持って逃げる。そこで夢は終わるが、なぜか鈴だけは手に持ったまま。
お姫様もかつて夢を見たことがあった。
菜の花畑で、鈴のついたぽっくりをなげた夢。
ふたりの夢がつながっていたことをしりにっこりする二人。それから二人はこっそり庭で一緒に遊んでいた。
ある日少女が現れない。再び泣いて少女の名前を読んでいたところ、乳母がそれを聞きつけ、身分の低い少女が入り込んでいたことがわかる。町で少女を探すと彼女もはしかにかかっていたことが分かり、お姫様もはしかにかかってしまう。
病気が治り、おせんに会いたいと思っているがやはり現れない。寂しく思っているとある日てまりが外から投げ入れられる。それをたもとに入れ中を覗き込むと、すでに労働している女の子の姿が・・・。
身分違いの少女たちの友情と別れを描いた美しくも悲しい話。
2023-08-08 06:19
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