食堂かたつむり [文学 日本 小川糸]
ある日突然、同棲していたインド人の恋人に根こそぎすべてを持って行かれてしまい、ショックで声を失ってしまった女性が、自分の実家に帰り、食堂を開き、そこで色々な人と関わる中で心を再生していく話。
食堂を開くまで&開いてからも、いろいろなことを手伝ってくれる昔の小学校の用務員さんだった熊さん、食堂へやって来る様々なお客さん、こういった人たちとの関わりを通し、人間と関わることの貴さを学んでいく主人公、さらに色々な人たちとの触れ合いの中でふと知ることになった大きな確執があった母親との和解。そして尊敬していた祖母の本当の過去。様々なことがゆっくりと明らかになっていき、それとともに声も取り戻し自らの心と向き合い前向きに生きていくことができるようになる主人公の様子が細かく描かれている。
飼っている豚のエルメスとのふれあい、そして最終的には・・・、というのも人間が様々なものを犠牲にしながら自然と共に生きていることを伝えており、とても心に残った。
しかし、はじめは非常に重要な感じで食堂を作る際にもポイントとなっていた、唯一インド人が残していった祖母が残してくれたぬかどこが、途中から全く登場しなくなるのが残念だった。
感動的なストーリーで涙を流した人も多いらしい作品ではあるのだが、なぜか私はそこまで感動しなかった。藤岡陽子さんの作品よりも、なんとなくリアリティがないからなのか・・・。
とはいえ悪くはない作品だった。
2023-08-08 11:12
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