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凍りのくじら [文学 日本 辻村深月]


凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)

  • 作者: 辻村深月
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/03
  • メディア: Kindle版



『ドラえもん』が登場する道具が結構出てくる作品ということで、『ドラえもん』にあまり興味がない私はあまり読む気がなかったのだが、それなりに評判の良い作品なので読んでみた。

頭が良く他人の観察眼にするどい主人公理帆子の視点で書かれた物語で、父親を早くに亡くし母親もガンで死にそうというのも影響しているのだろうが、結構覚めた視点で周りを観ており、解説にはあまり共感を得るタイプではない主人公とあったが、私はかなり共感できた。

p.30
「私の考える頭の良さというものは、多分その人の今までの読書量と比例する。 ~中略~ 私が普段遊んでいるこの子たちはほとんど本を読まないし、そのせいか、全ての場面で言葉が足りない。考え続けることに対する耐性がないのだ。ぱっと湧いた感情に飛びついて、それに正直に生きるだけ。」

p.252
「アイツ、何考えてるの。理帆子ちゃんほっとくなんて。だって、クリスマスも初詣も会わないってそういうことなんでしょう?
 ~中略~ 仕事が忙しくて会えないことを嘆いて罵る女がいるとよく聞くが、それってああ、そういうことかと気付いた。みんななんて頭が悪いんだろう。世の中で一番偉いのは、何も恋愛や彼氏彼女じゃないのだ。」

p.294
「頭がいい人間ってのは孤独だね。」
~中略~
「~人間っていうのは、頭の良さに伴って思考する能力を持てば持つ程、必然的に孤独にならざるを得ない。」

p.301
「精一杯、本当にギリギリのところまでやった人にしか、諦めることなんてできない。」


最終的にはこういった高慢な考え方は何となく否定され、周りを愛し同調していく方向へと行くのだが、私はこれらの言葉にかなり共感するし、中・高時代少なからずこうした考えを持っていた。そしてこれが言葉にできるということは恐らく辻村深月自身もこうした感情を心の中に抱き、生きづらさを感じていたのではないだろうか。

と、ここまで書いてなんだが、ストーリーは何となくグズグズと進み、かなりの終盤まであまり入り込めない。しかし最後の最後で一気に物語が動く。この場面はかなり衝撃的で惹き込まれはするのだが、やはりもう一歩。

面白くなくはないが、正直長さに見合っただけの圧倒的な感動みたいなものは得られない。
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