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鹿鳴館 [文学 日本 Classic]


鹿鳴館 (新潮文庫)

鹿鳴館 (新潮文庫)

  • 作者: 由紀夫, 三島
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1984/12/24
  • メディア: 文庫



辻村深月の作品『ツナグ』にも登場するし、三島の様々な戯曲を読み、彼の戯曲の傑作として知られる「鹿鳴館」も読んでみたくなり、購入し早速読んでみた。

岩波文庫『若人よ甦れ・黒蜥蜴』、河出文庫『オリジナル版 英霊の聲』があまりにも素晴らしいので、傑作と言われる「鹿鳴館」はさぞかし素晴らしい作品なのだろうと期待値が相当高い状態で読んだ。

・・・・・・。
明治時代の欧化政策をめぐる、賛成派と反対派の政治的対立、そのあいだに挟まれた恋愛模様を描いた作品で、よく舞台かもされているようだし、映画化、ドラマ化もされている作品らしいが、確かにぐいぐい引き込まれなくはないのだが、三島由紀夫独特の、精神の純粋さというか、美しさのようなものがあまり感じられず、人間のズルさというのか、政治的な側面があまりにも強調されており、わたし的にはもう一歩。

ほかに収録されている
「只ほど高いものはない」は、昔の夫の不倫相手が生活に困り、お手伝いさんとして家にやってきて、それを妻がいびるのだが、最終的にはそのお手伝いさんがいなくては家族全員の生活が成り立たなくなってしまうほど、彼女に依存する生活になってしまい、最終的には家を、夫を乗っ取られるような形になってしまうというもの。こちらも人間の醜い側面が、「これでもかっ」とばかりに描かれていて、読んでいてあまり気持ちの良いものではない。

「夜の向日葵」も、天然で人を疑うことを知らない未亡人を中心に、人々の醜い面がどんどんと溢れだされていく作品。最後はこの未亡人も自らの欲望に逆らえない感じの結末になっており、これまた読後感はすこぶる悪い。

最後に収録されている「朝の躑躅」も最悪の作品。ある子爵の館で夜通しパーティーをする子爵や男爵の面々。そんな中、彼らの多くがお金を預けているある銀行が潰れる。それを聞いて、自分たちの裕福な暮らしがなくなるのではとうろたえる面々。特にパーティーを主催している子爵の妻はあたふた。パーティーに参加していた成り上がりものの男はこの子爵の妻を、前から狙っていた。お金と引き換えに体を要求。妻はそれを受け入れる。しかし・・・。
人間の醜い面をこれでもかと描いた、本当に最低の作品。読後感は悪いなんてものではない。

正直、どの戯曲ももう一歩。もう一度読みたいという類の作品ではない。
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