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エウテュプロン [哲学 プラトン]


プラトン全集〈1〉エウテュプロン ソクラテスの弁明 クリトン パイドン

プラトン全集〈1〉エウテュプロン ソクラテスの弁明 クリトン パイドン

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/01/25
  • メディア: 単行本



ソクラテスが、メレトスを中心とした人々に「若者たちを誤った方向へ導いた、不敬である」として公訴され、役所へ向かう途中で、エウテュプロンなる人物と出会い短い対話をする。

エウテュプロンは、自分の父親を殺人罪で訴えようとしている。父の使用人の一人がほかの使用人を殺してしまったので、父はそのものを縛り上げ、どのように扱えば良いか、聖法解釈者に訪ねさせているあいだに、縛り上げられているものが死んでしまった。そこでエウテュプロンは父親を殺人の罪で訴えようとしている。これに対してソクラテスは異を唱え、「敬虔」とは何なのか、という対話を始める。

訴える理由を述べるエウテュプロンの言葉に、私はどうしても共感してしまう。

p.14
「敬虔とは、私が現在行っているまさにそのこと、すなわち、問題が殺人であれ、聖物窃取であれ、~中略~罪を犯し、不正を働く者を、それがたまたま父親であろうと母親であろうと、あるいは他の誰であろうとも、訴え出ることであり、これを訴えでないことが不経験なのです。」

これに対して、ソクラテスは、父親がなした程度のことで、父親を訴えることは、敬虔な行為ではない、ということを色々な方法で説得しようとする。

私はプラトンのソクラテスを主人公とした対話篇が大好きで、その思想に共感し、多大なる影響を受け、自分の行動に活かしているつもりだ。しかしここでのソクラテスの議論はどうしても納得いかない。この作品が、あまり一般的でないのもわかる気がする。
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リンさんの小さな子 [文学 フランス]


リンさんの小さな子

リンさんの小さな子

  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2005/09/17
  • メディア: 単行本



Tokyo FM メロディアス・ライブラリーという作家小川洋子さんが後世に残したい文学遺産を紹介する番組で、紹介された本。

紹介された当時、図書館で読みあまりに素晴らしく、そのうち購入しようとしていたら絶版になってしまい、メルカリで最近購入した本。

ヴェトナム戦争の傷跡を引きずる、ヴェトナムからの難民(とは直接的には書かれていないが恐らくそうであろう)リンさんと、フランス人の太った老人バルクさん。この二人の言葉は通じないが心が段々と通じていきかけがえのない友となり、最後は・・・。

恋愛もないし、激しい事件も起きない。物語は淡々と進んでいくのだが、とにかくじわっと心に響く。素晴らしい作品だ。

なんでもない変わることのない日々の生活のすばらしさ、美しい心の通い愛を伝えるこの作品、確かに小川洋子さんが好きであろう作品だと思った。

絶版になってしまったのがあまりにも惜しい作品。何故こういう作品が常に手に入るようになっていないのか。不思議な日本の出版状況である。
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