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風のローラースケート [文学 日本 安房直子 か行]


ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

ものいう動物たちのすみか (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



峠に住む家族たちの話。基本は茂平茶屋という茶屋を営む家族が主人公の話。

1. 風のローラースケート
◎茂平さんといたち
小さな茶店を営む茂平さんが、「きょうはひとつ、ベーコンをこしらえてみよう」と思い立つ。作っている途中でいたちが現れ、ひと口分けてくれ、と頼まれ、できたらわけてあげようと約束する。すると別のところからもいたちが現れ、こちらも同じように頼んでくる。同じように分けてあげることを約束する。遂に出来たところ、一方のいたちがベーコンを盗んで走り去る。いくら追っかけてもなかなか追いつけない。すると、もう一匹のいたちが現れローラースケートを貸してくれる。盗んだいたちもローラースケートを履いていたことがわかり、追いかけっことなる。ハラハラドキドキのストーリ。最後は楽しく平和に終わる。

2. 月夜のテーブルかけ
◎おかみさんとたぬき
おかみさんがセリをつんでいると、たぬきがテーブル掛けを選択しているところに出くわす。色々話しているうちに、このたぬきはホテルを経営しており、そこで美味しい料理を提供していることがわかる。このたぬきが、茂平茶屋で作っている「みそおでん」の作り方を習いに来ることになる。
茂平さんにみそおでんの作り方を習ったたぬきは、一家を自分の経営する「ゆきのしたホテル」へ招待する。
こどもの太郎もつれ三人で「ゆきのしたホテル」へ。そこでおいしい野草料理をごちそうになる。
こころがほっこりする話。

3. 小さなつづら
◎茂平茶屋の近くにある、お土産屋さんを営む老夫婦と猿
「つるのおんがえし」のような話で、風邪を直してもらった猿に助けられる老夫婦の優しい心がとても良い。最後の一文が心に残る。
「おばあさんは、いちばんはじめに、猿が持ってきてくれた見本のつづらを、だいじにしています。これだけは、けっして売らないでおこうと心に決めているのです。」

4. ふろふき大根のゆうべ
◎もへいさんといのしし
買い物に行った帰り、いそいで山を登っていたところ、いのししに出会う。そこで手にしていた大根を見て、「一本わけてもらえませんでしょうか」と頼まれる。一本わけてあげたお返しに、いのししのふろふき大根パーティに、呼ばれてご馳走になる。帰りにほっかむりを借り外へ出ると自分の足が軽くなっていてあっという間に家に着くという話。

5. 谷間の宿
◎朝、茂平茶屋に息をきらしてやってきた男と虫
狭い宿で虫に囲まれる男のはなし。宮沢賢治の「注文の多い料理店」を彷彿とさせる。かなり怖いし気持ち悪い話。

6. 花びらづくし
◎おかみさんと桜の精
桜がちらほら咲き始めた頃、おかみさんのもとに、さくら屋から、年に一度やってくる、桜の精による、お祭りへの招待状が届く。まわりの婦人たちと一緒に当日出かけていく。そこで美しい枕を買うのだが、それを使って眠ると、桜のはなびらに自分がどんどん埋められていってしまう。最後はなんとか助かるものの、他にもいろいろ買ったものを林の中に置き忘れてしまう。若干、教訓めいていて怖い話。

7. よもぎが原の風
◎太郎&子どもたちとうさぎ
こどもが遊んでいるうちにいつのまにかうさぎになってしまっている話。安房直子さんは同じ様な話しを違う形で何回か書いている。あまんきみこさんなどもそうなのだが、結構児童文学になわとびをモチーフにして話を膨らませることがよくある。

8. てんぐのくれためんこ
◎たけしとてんぐ
傑作。絵本にもなっている。めんこの弱い男の子が天狗にもらっためんこで、きつねたちと勝負するうちに力を付ける話。「セロ弾きのゴーシュ」のような動物たちによって力をつける人間の姿がとてもほのぼのとしていて良い。

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ラ・カテドラルでの対話 上 [文学 その他]


ラ・カテドラルでの対話(上) (岩波文庫)

ラ・カテドラルでの対話(上) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/06/16
  • メディア: 文庫



この本に付された「緒言」によると、筆者バルガス=リョサ自身が自分の作品の中で「火事場から救い出す」としたら選ぶであろう作品らしい。

上巻だけでも600ページを超える大作。

初めに新聞社から出てくるサンティアーゴの描写から始まる。彼が家に戻り、妻のアニータから、犬が野犬収容所に連れて行かれてしまったことを教えられ、飼い犬を助け出すためにそこへ行き、無事救い出したところ、彼の実家の召使だったアンプローシオと偶然出会い、彼と「ラ・カテドラル」という飲み屋に行くことになり、そこでの対話を描いた作品。

資本家の下に生まれたサンティアーゴの、共産主義へと傾倒する自身のアイデンティティの葛藤、上流階級が進む大学ではなく、一般大衆が進む大学をあえて選び、そこで出会った共産主義者の女性アイーダと友人のハコーボとの三角関係、ハコーボの裏切り、ストライキによる蜂起の失敗、逮捕、裕福な生活を捨て、自立するために新聞社で働くことになるまでの物語が軸となって進む。

その裏で、彼の父親ドン・フェルミン、その友人ドン・エミリオ、権力者ドン・カヨ・ベルメデスの薄汚い政治的やり取り、警察の動きが挟まれる。

さらに、サンティアーゴと話をしているアンプローシオと彼の愛するアマーリアとの恋物語がところどころ入ってくる。

過去と現在を行ったり来たりするとともに、いろんな挿話が会話会話のあいだに入ってきて、リョサ特有の読みづらさがあるが、とにかく物語が面白い。重層的なのだが、それぞれの話がいろんなところでつながっており、絶妙なバランスで話が進んでいく。

アマーリアの純粋な心がとてもよく、彼女の挿話がとにかく楽しい。サンティアーゴの大学時代の恋と自分の内面の葛藤の部分もとても面白い。

読みづらいが本当に面白い作品だ。
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クラリネット協奏曲のための楽章 [ブリテン 協奏曲]

I. Molto Allegro
★★★★★★☆☆☆☆
元気に始まる。クラリネットも生き生きとした感じ。すぐに静かで牧歌的な雰囲気になる。ハープやティンパニー、トライアングル等も登場し若干不穏な雰囲気になる。ソロ・クラリネットと打楽器、他の管楽器の短いパッセージによる対決のような場面を経て、後半美しい幻想的な世界になり、最後は牧歌的に終わる。
雰囲気がコロコロ変わる楽しい楽章。

II. Mazurka elegiaca
★★★★★★☆☆☆☆
大草原をおもわせる壮大なオケによる伴奏の上を、哀愁漂う美しいメロディをクラリネットが奏でる。
曲は段々と行進曲風になっていき、異国情緒漂うメロディが流れる。最後は静かに曲を閉じる。

III. Finale
★★★★★★☆☆☆☆
明るく元気にソロが入ってきて、それにオケが答える。軽快で開放感のある音楽となり、楽しげに終わる。

この曲も悪くはない。
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ヴァイオリンとヴィオラのための協奏曲 Op.15 [ブリテン 協奏曲]

I. Moderato con moto
★★★★★★★☆☆☆
ピッチカートの短い音で始まる。その後管楽器が若干悲しみを帯びた力強いメロディを奏でて始まる。
ヴィオラが勇壮に主題を奏で、ヴァイオリンがそれに応え、オーケストラも入ってくる。若干静かな第二主題。広がりのある展開部を経て、最後は最後の悲しみを帯びた力強いメロディが鳴り響き、カデンツァ的な美しいソロっぽい部分を挟み、静かに終わる。

II. Vivace
★★★★★☆☆☆☆☆
夢幻の世界に入ったかのようなもやっとした始まり。ヴァイオリンの静かなむせび泣くソロのあと、ヴァイオリンとオケも入り壮大な感じになる。途中ヴァイオリンとヴィオラの対話的な部分を挟み、最後は静かに終わる。

III. Passacaglia - Andante lento (un poco meno mosso)
★★★★★★☆☆☆☆
低い弦の「ブンッ、ブンッ」という音の上を、短いパッセージが重ねられてメロディを形作り、その後ピッチカートの伴奏の上を、スピード感のあるメロディがソリストによって奏でられていく。かなり緊張感のある場面。途中スピードがとまり、少しゆったりとした雰囲気となる。最後は民謡風メロディで静かに曲を閉じる。

悪くはない曲。
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人権は国境を超えて [その他 本]


人権は国境を越えて (岩波ジュニア新書)

人権は国境を越えて (岩波ジュニア新書)

  • 作者: 伊藤 和子
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2013/10/19
  • メディア: 新書



この本も仕事の関係で読んだ。

著者は弁護士。弁護士として働きながら、国産人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」というNGOを主催する女性。

弁護士として、「北京女性会議」に日本代表の一員として参加し、そこで話し合われたことに衝撃を受け、NGO立ち上げることになるまでを完結に記した「プロローグ」が一番読み応えがある。10ページ強のものなので、是非この部分だけでも多くの人に読んでもらいたい。

本編は彼女が、「北京女性会議」参加後、どのように弁護士としてはたらき、留学をし、国際人権団体を立ち上げ、様々な国で活動してきたか、年を追って、綴られている。

本編はそこまで刺激的な感じではないが、それなりに面白かった。

p.151
「私は世の中に様々な人権侵害があるけれども、アメリカのような超大国が、ルールを無視して、自分より弱い国を侵略して、罪もない人をたくさん殺害し、その責任をとらない、というのが一番深刻な人権侵害だと考えています。」

これはなかなか指摘しづらいポイントで、あまり多くの人が問題にしないが、確かに大きな人権侵害であると思った。

岩波ジュニア新書ということでそれなりに読みやすい本だった。
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