地球をこわさない生き方の本 [その他 本]
これも仕事関係で読んだ本。
1990年に出版された本だが、この本もやはりいまだに十分通用する内容を持っている。つまり日本は社会として、進歩していない、もしくは、退化していると言える。
「はじめに」に書かれているとおり、我々は「地球をこわしつづけているのです。毎日。」この考えをすべての人が持ち、すこしでもその改善に向け行動していけたら世界は変わっていくのにと思ってしまう。
食 の問題
ゴミの問題
物欲の問題
自然の問題
ゆっくり生きるとこの大切さ
こういったことを真摯に取り上げて話を勧めている。
筆者の食卓を構成しているものは「玄米、野菜、豆、小魚、海藻」らしい。いつも思うが、こうしたものを常に食べられる生活は、良いものだと思う。ここでは、アメリカの牛肉文化を取り上げ、餌の問題、ゲップの問題、など今でもよく取り上げられる問題が挙げられているが、一向に変化していない。
pp.107~108
「戦争では、自分たちが殺されるから嫌だ、というのは当然です。しかし同時に、隣の人たちを傷つけてはならない、そういうことには結局考えが及ばなかった。まちがったことがあったらまちがったことを反省して償わねばならないとおいうふうになっていない。だから日本の社会は、いまでも朝鮮の人たちや中国の人たちに償いをしていない。だから平気で、自分たちの金儲けだけのために外国の人たちに迷惑をかけることができるのかもしれません。」
1945年8月15日の敗戦依頼、戦争と真摯に向きあわず無責任に自分たちのしてきたことを反省してこなかった日本の状況も批判している。もちろん天皇を免責したことにたいする批判もある。
私もしょっちゅう言っているが、日本の平和教育は、戦争の悲惨さ、自分たちが受けた苦しみばかりを強調するもので、加害責任に向き合っていないし、そもそもどんな状況であれ人を殺すということがあってはならないことなんだという思想がない。こうしたことにも目が行き届いており、筆者の素晴らしい思想が随所に見える。
pp.119~120
「ものごと万事、欲望がすぐ結果に短絡するようになってしまっている。本当は何かを願望することと、願望したことが満たされるあいだが実は最も楽しい時間であって、満たされてしまったら、もうおしまいなのだというところがあるでしょう。」
今は満たされることが前提で、絶え間なく満たされるものを探し続け、行動し続けることが問題なのだろう。
p.124抜粋
「パニックのときは、立ち止まって、~中略~ 自分で考えて、みんなとちがう方向へ行くほう賢明なのです。
勇気と知性をもって冷静に現実を直視しなければなりません。
利己主義と刹那主義、目先のことと自分のことしか考えずに走ることは、もうやめたいものです。
一人一人が自分を取り戻すことが大切です。パニックが過ぎてみれば元のもくあみという現実は、私たちの愚かさや不安を本質的に反省し、のりこえていないということです。」
3.11後のパニック、コロナ後のパニック、そしてある程度落ち着いたあと、すぐにその前の状態に戻ってしまう愚かさ。ほんとうに日本は変わらない。
p.183
「なにも完璧な節約主義者にならなくてもいい。中途半端でいいと思うのです。」
最後のこの言葉は素晴らしい。中途半端でもいいから意識を持って少しでも現実を変えていく努力をし続けることこそ大事なのではないか。
良い本だった。
カスタネット [文学 日本 安房直子 か行]
お百姓の信太が、背中のかごにどっさりと梅の実をいれて、町へ売りに出かける。
町へ行く道中、おかみさんのことを考える。
おかみさんは三つ年上で、たいへんな働き者だが、ちっとも美しくないし、あまりやさしい言葉もかけてくれない。(もっと、べつのよめさんもらうんだった)とまで考えている。
森を歩いているあいだ、
「カタ、カタ、カタ」
という不思議な音が聞こえてくる。しばらく聞いていると、ある木の中から聞こえてくる木の精がカスタネットの音だとわかる。
木の中から出てきた木の精に、梅を少し分けてくれ、と頼まれ、あげる。木の精は帰ってくるまでに「砂糖づけ」にしておいてあげると約束する。
町で梅を全部売った帰り道、木の精に誘われ目をつむると、信太は木の中へと吸い込まれてしまう。
一日経っても帰ってこない信太を心配したおかみさんが、森へ向かう。
木のところには彼の帽子が。カスタネットの音を聞き、木の中に閉じ込められているのを知り、他にも閉じ込められていた数々の動物の助けを借りて、最終的には信太を救出する。
しかし、その過程で信太は足を痛めてしまい、足が動かなくなってしまう。
人間の欲望を描いたちょっと恐ろしい作品。あまり美しくないが働き者の妻がどうしようもない夫を助け出すというのが、安房直子さんっぽくて良かった。
カーネーションの声 [文学 日本 安房直子 か行]
書き手の祖父が七十いくつでなくなる。彼は十坪ほどの温室を残していた。そこにはいろいろな花が植えられていたが、カーネーションだけはもらいてもおらず全部捨てることに。
その後、その跡地にアパートが立つ。
そのアパートには八人の男が住むことに。
ある日のこと、住人の一人が、
「カーネーションよ、
カーネーションよ、
あたしらみんな、カーネーションよ」
という歌声を聞いたという。他の十人も同じように耳にしていた。
後日彼の部屋におじゃまして部屋にいると、確かに声が聞こえてくる。
それ以来、カーネーションは書き手の大好きな花に変わる。しかし徐々にカーネーションの声は聞こえなくなっていってしまう。
自然を壊す人間に警鐘をならす美しい作品。
烏の北斗七星 [文学 日本 宮沢賢治 か行]
風の又三郎-宮沢賢治童話集2-(新装版) (講談社青い鳥文庫)
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/10/31
- メディア: 新書
烏の義勇艦隊が軍事演習をしている。山がらすとの戦争に備えているのだ。
演習が終わり、からすの大尉は、いいなづけのからすと話をする。
青い鳥文庫版 p.158
「しかしもちろん戦争のことだから、どういうはりあいでどんなことがあるかもわからない。そのときはおまえはね、おれとのやくそくはすっかり消えたんだから、ほかへ嫁ってくれ。」
そして大尉は星へお祈りをする。
やまがらすとの戦。
大尉は生きて帰る。そして次のように言う。
p.166
「(ああ、マジエル様、どうかにくむことのできない敵をころさないでいいように早くこの世界がなりますように、そのためならば、わたくしのからだなどは、何べん引きさかれてもかまいません。」
ストーリー自体はたいして面白くないのだが、自己犠牲の精神、世界平和を望む宮沢賢治の思想が見える美しい作品。