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口笛の上手な白雪姫 短編⑭ [文学 日本 小川洋子 短編]


口笛の上手な白雪姫 (幻冬舎文庫)

口笛の上手な白雪姫 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 小川洋子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2020/08/06
  • メディア: Kindle版



口笛の上手な白雪姫

01. 先回りローバ
02. 亡き王女のための刺繍
03. かわいそうなこと
04. 一つの歌を分け合う
05. 乳歯
06. 仮名の作家
07. 盲腸線の秘密
08. 口笛の上手な白雪姫

01.
 吃音の少年が主人公。彼の両親は恐らく何らかの宗教団体の熱心な信者で、定期的に集会に通っている。その宗教の行事に合うように自分の誕生部の日付を6日間ごまかしたことにより、自分は吃音になってしまったと主人公は思っている。彼は、両親が集会に参加するためいない間、留守を任され電話が鳴った時は対応するよう言われているのだが、吃音のため電話に出たくない。そのため117にダイヤルし、ひたすら時報を聞き続けている。
 そんなある日、彼の前に、言葉を先回りして回収している老婆(ローバ)に出会う。カタカナの名前が好きということでローバと呼ぶことになる。吃音の彼が窮地に陥った時に、救ってくれるような時には現れないが、しばしば彼の前に現れる。
 若干、宮沢賢治の『セロ弾きのゴーシュ』的な作品で、心温まる作品。重松清もよく吃音作品を書くが、彼の作品はどこか鼻につくが、この作品は全くそんなことがなかった。

02.
 手作りの洋服を作るお店で働いていた刺繍がとても上手なお針子、リコさんと主人公の女性の心温まる交流を描いた作品。リコさんは先代の主人が亡くなった後、そのお店を引き継いでおり、主人公の女性も、周りで子供が生まれるたびに、リコさんに「よだれかけ」を作ってもらって刺繍を入れてもらっている。最終的に過去の思い出と現在が交わる素敵なお話し。

03.
 かわいそうなことをリストアップしてノートに記している少年の話。世界一大きいシロナガスクジラに始まり、ツチブタを経て、兄が入っている野球チームの、あまりうまくない選手の話になる。最後はノートが足りなくなってしまいどうしようか、という部分で終わる。

この世にある、様々な小さきものに光を当てる作品。地味だが心が温かくなる良作。

04.
 ミュージカル『レ・ミゼラブル』を主題としたストーリー。主人公は同僚からミュージカルのチケットをもらう。ミュージカルに興味がない主人公はあまり乗り気ではなかったが演目を見て一気に気持ちが高まる。
 主人公の母親の姉は、離婚して母子家庭。伯母さんは働いているので、主人公の4つ上の従妹は良く主人公の家に来て遊んでいて兄弟のように育った。従妹が大学生の時、寮のベッドで死んでいるのが発見された。喪主の役目も立派に果たし、普通に働いていたある日叔母が、「あの子がミュージカルに出ているの」と言い出す。『レ・ミゼラブル』の主人公ジャン・ヴァルジャンが自分の息子だと。そして叔母と主人公は二人で観劇する。ミュージカルのストーリーと、過去と現在が入り混じりながら物語は進行する。

かなり物語に入り込んで読めた。結構面白い作品だった。

05.
学者の父母の下に生まれた男の子の話。母は息子をとても大切にしていて病気になること、死んでしまうことをとても恐れていた。しかし息子は何かに集中すると周りが見えなくなってしまい迷子になってしまう癖があった。自国にいるときは良かったのですが、学会発表のため外国へ家族で行った際、迷子になってしまう。彼は聖堂に迷い込み、いろいろな彫像を目にする。結局彼は見つけ出され、最後に乳歯が抜ける。

06.
ミスターMMという作家に心酔してしまい、彼の全作品を暗記してしまっている。あまりのファンのため作家が主催する読者のための集まりに参加するほど。その集まりで彼女は、その作家が書いたこともない場面も、さも書いてあったかのように質問する。その作家は落ち着いてその質問に、さも自分がその場面を書いたかのように答えてくれる。結局その後もそのようなことが続き、お互いそれを楽しんでいるかのような描写になっていくのだが、最後は主人公は、集まりを荒らしている人間だと糾弾されその場から追い出されてしまう。どこまでが本当でどこまでが嘘なのかやはりわからない作品。『不時着する流星たち』の「04. 臨時実験補助員」のモチーフを用いている。

07.
廃線の危機にある路線に住む、曾祖父さんとひい孫の話。二人は廃線からその路線を救おうと毎日電車に乗り、そこで二人で空想の設定を楽しみながら終点で兎に餌をあげ、子どもが生まれるよう優しく撫でてあげる。曾祖父さんが亡くなり、その代わりのように弟が生まれる。

08.
ある公衆浴場のそばにいるおばさんの話。彼女は浴場で、乳飲み子をつれてやってきた母親が浴場に入っているあいだに、赤ちゃんを預かってあげる。その際、赤ちゃんにしか聞こえない音量で口笛を吹いてあげる。最後は少し哀愁漂う感じで終わる。

全体的に普通な感じの作品が多かった。04は良かった。
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シューベルト 歌曲集37 [シューベルト 歌曲]


The Complete Songs

The Complete Songs

  • アーティスト: Schubert, F.
  • 出版社/メーカー: Hyper
  • 発売日: 2005/11/25
  • メディア: CD



♪レルシュタープの詩
01. D.957「白鳥の歌 愛の使い」
★★★★★★☆☆☆☆
さざ波のようなピアノ伴奏に乗って、美しく若々しいメロディが爽やかに歌われる。恋人が想いを小川に託す歌らしい。

02. D.957「白鳥の歌 兵士の予感」
★★★★★☆☆☆☆☆
暗く重々しい始まり。途中から少し動きが出てきて明るさが交じる。恋人の揺れる気持ちを表すかのように曲調が次々に変化する。最後は暗く終わる。遠く離れた戦場にいる兵士が恋人を想う歌らしい。

03. D.957「白鳥の歌 春の憧れ」
★★★★★★☆☆☆☆
少しうわずった感じの、喜びに溢れた曲。ピアノ迫ったくるような感じも良いし、歌の緊張感ある感じも良い。最後は劇的に終わる。

04. D.957「白鳥の歌 セレナーデ」
★★★★★★★★☆☆
淡々とした和音の連続による伴奏に乗って、すこし悲しみの混じった美しい旋律が歌われる。途中長調になり明るく前向きになる部分、その後長調と短調が入り混じる不安感と期待感が交錯する間奏も綺麗。

05. D.957「白鳥の歌 住処」
★★★★★★☆☆☆☆
暗く劇的に始まる。時に明るくなる瞬間があるが、基本暗い。暗く厳しい自然こそが自分のいるべき場所だと歌った曲らしい。

06. D.957「白鳥の歌 はるかなる土地で」
★★★★★☆☆☆☆☆
救いようのないほど暗く始まる。止まってしまうのではないかと思うくらいゆったり進んでいく。中盤から希望が見えてくるが、最後は暗く終わる。故郷も家族も全て捨てて去っていく人を描いた曲らしい。

07. D.957「白鳥の歌 別れ」
★★★★★★★☆☆☆
何故か跳ねた感じの明るい音楽。新天地へ赴く馬車の様子を表しているらしい。軽快な同じリズムが繰り返されクセになる。

♪ハイネの詩
08. D.957「白鳥の歌 アトラス」
★★★★★☆☆☆☆☆
ピアノの激情的な前奏から始まり、歌も激的。

09. D.957「白鳥の歌 彼女の肖像」
★★★★★☆☆☆☆☆
暗く重く始まり、ひたすら絶望的な感じが続く。恋人を失った恋人が嘆いている曲らしい。

10. D.957「白鳥の歌 漁師の娘」
★★★★★★☆☆☆☆
この曲集にあっては珍しく明るく愛らしい曲。水辺で戯れる男女を描いたものらしい。

11. D.957「白鳥の歌 街」
★★★★★☆☆☆☆☆
幻想的な感じで始まり、最後すこし力強くなり、暗く終わる。

12. D.957「白鳥の歌 海辺にて」
★★★★★★☆☆☆☆
ゆったりとしたメロディアスな始まり。途中情念的な部分が入ってくる。この2種類の雰囲気が交互に現れる曲。

13. D.957「白鳥の歌 影法師」
★★★★★★☆☆☆☆
重く沈鬱な曲。鎮魂歌のような雰囲気。途中少し感情が高ぶる場面があるが、最後は沈鬱に終わる。

♪ザイドルの詩
14. D.957「白鳥の歌 鳩の使い」
★★★★★★★☆☆☆
10分を超える大作。クラリネット?とピアノの前奏で静かにのどかに始まる。段々と熱をおび、少し暗い部分がやってくる。後半、天国へ導かれるように清らかな、アヴェ・マリアのような音楽になる。最後は軽やかに華やかに終わる。

15. D.965b「鳩の使い 別Version?」
★★★★★☆☆☆☆☆
軽やかな曲。

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