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さんしょうっ子 [文学 日本 安房直子 さ行]


風と木の歌―童話集 (偕成社文庫)

風と木の歌―童話集 (偕成社文庫)

  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2006/07/01
  • メディア: 単行本



きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/01/02
  • メディア: 単行本



なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

なくしてしまった魔法の時間 (安房直子コレクション)

  • 作者: 直子, 安房
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2004/03/01
  • メディア: 単行本



木の中に住んでいる「さんしょうっ子」。
彼女が住んでいる木が、ある日「じゃまっけだ」ということで切られそうになるが、すずなという娘のおかげで切られずに住む。
すずなは茶店の三太郎という男の子といつも遊んでいた。すずなと三太郎はさんしょうっ子が住む木の下でよくおままごとをして遊んでいた。

さんしょうっ子はお手玉が大好きで、すずながお手玉で遊んでいると、それを持っていってしまうことがよくあり、すずなはお母さんに「しようのない子だね、いくらつくってやってもなくすんだから。」といつも言われていた。
さんしょうっ子は時々、すずなと三太郎の前に姿を現して、三太郎の店でおだんごをもらったりしていた。

時は流れ、すずなも三太郎も大人になる。さんしょうっ子も大人になったのだが、木の精は大人になると人から姿が見えなくなってしまう。そのことにさんしょうっ子はまだ気がついていない。

そんなある日。すずなは見知らぬ人のお嫁に行くことに。相手はとなり村の大金持ち。一方三太郎は茶店を継いだものの、商売はうまくいかずどんどん貧乏に。すずなは嫁に行ってしまうし、商売はうまくいかないしで、気落ちしている三太郎を励まそうと、さんしょうっ子は彼に話しかけるが、すずなのことで頭がいっぱいの彼は気がつかない。

そんな三太郎に、昔こっそり持って行っていたお手玉をプレゼントする。これを福の神からのプレゼントだと思った三太郎とお母さんは、中に入っていたあずきで団子をこしらえ、これが大ヒット。店は大繁盛。

さんしょうっ子は、その後三太郎に会いにやってきて、話しかけるが、その声をすずなに似た声だと思う三太郎。悲しくなったさんしょうっ子は風に乗って行ってしまう。

さんしょうっ子はいなくなったサンショウの木は枯れてしまう。その枯れた木で、三太郎とお母さんはすりこぎを作る。

あまんきみこさんの「おにたのぼうし」や、浜田廣介の「泣いたあかおに」にも通じる、暖かくも少し悲しい美しい話。賞を取ったこともうなずけるかなりの名作。
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歴史的情景 第二組曲 Op.66 [シベリウス 交響詩]


The Sibelius Edition: Tone Poems

The Sibelius Edition: Tone Poems

  • 出版社/メーカー: Bis
  • 発売日: 2007/08/27
  • メディア: CD



1.狩り
★★★★★★☆☆☆☆
激しい和音で始まり、ホルンが力強くメロディを奏でる。
森の中で動物たちが戯れているかのような、短い動機が積み重ねられていく。
少し緊張感のある刻んだような音楽を挟み、最後は雄大な大自然を表したかのような音楽となる。

2.愛の歌
★★★★★★☆☆☆☆
穏やかな朝靄を表しているかのような、もやっとした雰囲気で始まる。
静かで夢見るようなメロディが流れ出し、夢の中に誘うかのようにハープが入ってくる。
幻想的で美しい曲。

3.跳ね橋にて
★★★★★★☆☆☆☆
うさぎたちが周りを気にしながら跳ね回っているかのような感じではじまる。
大自然のいろいろな音が聞こえてきて、段々とそれがつながり、息の長い旋律となっていく。
段々と静かに穏やかになっていく。

愛らしい曲が多い組曲。
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サリーさんの手 [文学 日本 安房直子 さ行]


きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

きつねの窓 (ポプラポケット文庫 51-1)

  • 出版社/メーカー: ポプラ社
  • 発売日: 2015/01/02
  • メディア: 単行本



れい子という女性が、線路沿いの安アパートを借りる。彼女はお人形を作る会社で働いており、工場でお人形の「手」の部分だけを作っている。工場の流れ作業の中で、布の手の部分をミシンで縫い合わせる仕事をしている彼女は、いつか自分ひとりで、ひとつの人形をこしらえてみたい、と考えている。

暗いアパートのせいか、だんだんとれい子の気持ちは沈んでいき、転職も考える。しかもやはり線路際ということでうるさく睡眠不足。夜には通らないはずの電車の音も、真夜中の3時に一回聞こえる。その時通る電車はいつもの電車に比べなんだか少し明るい感じがするのだった。

そんなある日、眠れないまま、「電車がとおるかしら」と思い窓を開けて待っていると、白い猫が線路を横切ったかと思うと、続けてオレンジの電車が音を立ててやってくる。電車の中には女の子がたくさん乗っているが、みな同じ顔。よく見ると彼女が工場で作っているサリーさんが乗っている。そして彼女が作ってあげた「手」をみんなが彼女に向かって振っている。

「あたしが縫ってあげた手、一生けんめいふってたわ」と思い、その日から彼女の顔色はみちがえるほど良くなり、目もかがやきだす.


真摯に働く人を励ます、安房直子さんの心の暖かさが伝わってくる名作。最後の言葉が素敵だ。

「大量生産でつくられる個性のとぼしい人形にも、それが人形であるかぎり、やっぱり、ほとばしる命があるのだなあと、れい子は思うようになりました。」
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