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小公子 [文学 イギリス]


小公子 (光文社古典新訳文庫 Aハ 2-2)

小公子 (光文社古典新訳文庫 Aハ 2-2)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2021/03/10
  • メディア: 文庫



バーネットの『小公子』を読み終わった。これもあらすじだけ読むと全く面白そうに感じないが、小川洋子さんが子供の頃愛読した本ということで読んでみた。

伯爵の三男がアメリカへ旅行した時に知り合ったアメリカ人女性と知り合い結婚し子どもをもうける。
わけのわからないアメリカ人女性と結婚した三男に激怒した伯爵は彼を勘当。三男も子どもが生まれた後、死んでしまう。

しかし、伯爵の長男・次男が死んでしまい、彼らには後継もいないので、セドリックという三男の息子に伯爵の相続権が回ってくる。

イギリスの伯爵領に連れてこられたセドリックは持ち前の純真さと優しさで、独善的で起こりっぽい伯爵の心を変えていく。

とにかく少年セドリックの心が美しすぎるのだが、イヤミっぽいところは全くない。様々な事件が起こるのだが、それもセドリックや彼の心の美しい母親、彼が助けたいろいろな人の助けによってどんどん解決していく。

『小公女』と共に確かに面白く名作と言える。

p.202
「おじいさまって、ぜったい、世界中じゅうでいちばんいい人だと思います。」中略「おじいさまは、いつもいいことをしてるもの。そうでしょ?いつも、ほかの人たちのことを考えてるもの。それはいいことの中でもいちばんいいことだ、って〈最愛のきみ〉が言うの。自分のことは考えずに、ほかの人のことを考える、ってこと。」

p.223
「いい子でいてね、セディ。そして、何よりも、勇敢であること。何よりも、優しくて、いつも誠実でいること。そうすれば、生きているかぎり誰かを傷つけることはないわ。そして、たくさんの人の力になることができて、あなたが生まれてきたおかげで、この大きな世界が前よりもっといいところになるかもしれないの。それこそが何よりすばらしいことなのよ、セディ。」

p.257
「すごくお金持ちなのは、たぶん、そんなに楽なことではないかもしれない、って。いつもたくさんのものに恵まれている人は、ほかの人たちがそれほど恵まれていないってことを忘れちゃうかもしれないからって。お金持ちの人はいつも気をつけて忘れないようにしなくちゃいけないって。」

p.389
「セドリックはいつも親切で優しい心づかいのもとで育てられ、いつも他人に親切であるように、他人を思いやるように、と教えられて育ったからなのだ。おそらく、それはほんの小さなことなのだろうが、何より大切なことだった。」

フランスの自然主義小説のような、読んでて辛くなるような描写もないし、下劣な性描写もないし、読んでいてとっても気持ちの良い小説だ。
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チェロ・ソナタ Op.65 [ブリテン 室内楽曲]

第1楽章 ディアロゴ
★★★★★☆☆☆☆☆
静かなチェロとピアノの対話で始まる。休日の昼下がり、優雅な時間ながらも若干悲しげな話題を取り上げている感じ。
感情が高まり、ピアノがアルペジオ?で激しく伴奏を奏でると、チェロも素早いパッセージを激しく弾き始める。
再び穏やかに少しユーモラスな感じになる。
展開部はドラマティックな展開。
最後ははじめの対話的な部分に戻り静かに終わる。

第2楽章 スケルツォ-ピツィカート
★★★★★☆☆☆☆☆
チェロがピッチカートで短いパッセージを奏で、ピアノがそれに答える。中間部は結構激しい応戦がある。最後は再び静かな対話的な感じなる。

第3楽章 エレジア
★★★★★☆☆☆☆☆
暗く憂いに満ちた楽章。祈りのような雰囲気もある。

第4楽章 マルチア
★★★★★☆☆☆☆☆
激しく混沌とした始まり。最後は静かに幻想的に終わる。ピアノの音が綺麗。

第5楽章 無窮動
★★★★★☆☆☆☆☆
題名通り激しく、スピード感のある曲。最後は大迫力で終わる。

色彩豊かで生で聴いたら結構楽しめる曲だと思う。
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チェロ組曲第三番 Op.87 [ブリテン 器楽曲]

I. Introduzione: Lento
★★★★★☆☆☆☆☆
伸びやかながらも暗い旋律。途中、ピッチカートで鐘の音を模したような感じになるのが面白い。

II. Marcia: Allegro
★★★★★☆☆☆☆☆
不機嫌な馬が走っている感じ。少し危うさを感じる跳ねた感じのスピード感のある曲。

III. Canto: Con moto
★★★★☆☆☆☆☆☆
若干民謡風の、ゆったりとした曲。若干哀愁漂う感じがなくはない。最後は重音となり終わる。

IV. Barcarola: Lento
★★★★★★☆☆☆☆
バッハの無伴奏チェロ組曲第一番をおもわせる、広がりのある優雅なメロディの曲。とても綺麗。
後半ドラマティックになりそのままアタッカで次の曲へ。

V. Dialogo: Allegretto
★★★★★★☆☆☆☆
少しラテン系の哀愁漂うメロディが印象的。速いパッセージとギターのように弦をかき鳴らすゆったりとした部分が順々にやってくる。最後はすこしおどけた感じとなる。変化に富んで面白い曲。

VI. Fuga: Andante espressivo
★★★★★☆☆☆☆☆
重く暗い主題。フーガの構造はそれなりにわかりやすくはある。後半かなり激しくなっていく。

VII. Recitativo: Fantastico
★★★★★★☆☆☆☆
緊迫感のある間の多い始まり。緊張感の中にもすこし遊びの要素も入った面白い曲。

VIII. Moto perpetuo: Presto
★★★★★☆☆☆☆☆
性急な感じの短い曲。

IX. Passacaglia: Lento solenne -
★★★★☆☆☆☆☆☆
暗く深刻な主題。激しい部分有り、ゆったりとした部分有りといろいろな変奏が楽しめる。
10分近い曲で、曲の半分位を占めるのではないだろうか。主題が暗いので全体が暗い雰囲気で支配されている。

最後のパッサカリアを除いて、一曲一曲が短く、変化にも飛んでいるので、結構楽しく聴ける組曲。
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