SSブログ

よだかの片思い [文学 日本 島本理生]


よだかの片想い (集英社文庫)

よだかの片想い (集英社文庫)

  • 作者: 島本 理生
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2015/09/18
  • メディア: 文庫



島本理生作品はまだ2作品しか読んでいないが、心に葛藤を抱えながら、傷ついたり言葉にできない気持ちなどを癒したり発散したりする過程で誰かと肉体関係を結び、本来の自分を取り戻していく的な主人公像が、どうしても私には入ってこなかった。

しかし、この作品は違った。題名からもすぐわかるとおり、これは宮沢賢治の『よだかの星』という名作をベースにしている。この作品内でも言及されているが、私も学校の授業で知って以来大好きな作品だ。自分は「みにくい」と嘲られても、自分の周りの人間を傷つけるわけにはいかないと、死に向かって飛んでいくよだか。心の澄んだ素晴らしい登場人物でまさに宮沢賢治そのものといった感じで、宮沢賢治作品の中でも私の中で一、二位を争う作品だ。

この物語の主人公は顔の左側に生まれつきアザのある女の子。
小さい頃からおじいちゃんのおかげでそれをコンプレックスに思わずに生きてきたが、小学校の先生の一言によって、それはコンプレックスを持つべきものなのだと意識してしまう。
それから静かに生活し、大学では理系を選び大学院まで進んで研究を続ける。彼女。しかし出版社の友人から顔にアザや怪我がある人の写真集的なものを作るから協力して欲しいと言われたことから彼女の人生は変わっていく。

映画監督との出会い・付き合いや大学の先輩や同僚との関わりの中で、自分にアザがあることと正面から向き合い、自分だけでなく他人と社会とのつながりを考えるようになる主人公。とにかく真っ直ぐで真面目な姿があまりにも素晴らしい。

p.208
「あなたが思っているほど、多くの人は深刻にも真剣にも生きていないんだ。だから真の孤独の中にいるとき、受け止めてくれる人の存在は貴重なんだよ。アイコさんの真面目さや真剣さを、その先輩はきっと欲しているんだよ。」

p.213
「私はずっとこのアザを通して人を見てた。でも、だからこそ信頼できる人とだけ付き合ってこられたんです。ミュウ先輩もその一人です。」

簡単・簡潔に感想を言葉にできないほど、深くて考えさせられる素晴らしい作品。
ひさしぶりに良著に出会えたきがする。
nice!(0)  コメント(0) 

Op.126 チェロ協奏曲第二番 [ショスタコーヴィチ 協奏曲]


Shostakovich: Cello Concertos Nos.1, 2, Satires

Shostakovich: Cello Concertos Nos.1, 2, Satires

  • 出版社/メーカー: Russian Revelation
  • 発売日: 1998/04/21
  • メディア: CD



第一楽章 ラルゴ
★★★★☆☆☆☆☆☆
チェロがソロで暗く重い前奏を奏で、その後同じような第一主題を奏でる。伴奏も弦楽器の低い音でとにかく暗く思い。第二主題は若干光がさしたような感じがあるがそれでも重い。展開部はパーカッションも交じり少し諧謔的で明るい。最後は少し明るく終わる。

第二楽章 アレグレット
★★★★★☆☆☆☆☆
明るく楽しげにはねた感じで始まる。途中からパーカッションも活躍を始め、チェロとバトルが始まる。アタッカでそのまま最終楽章へ。

第三楽章 アレグレット
★★★★★☆☆☆☆☆
華やかだけれどどこか影のあるファンファーレで始まる。激しいチェロのカデンツァの後、叙情的なメロディが流れる。行進曲風になった後、打楽器とのやりとりが始まる。混沌とした雰囲気の後、静かになり瞑想的なメロディがチェロによって奏でられる。最後はユーモラスに終わる。

普通。
nice!(0)  コメント(0)