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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 [文学 日本 辻村深月]


ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

  • 作者: 辻村深月
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/12/03
  • メディア: Kindle版



殺人事件と思わしき描写から始まる。しかも娘が母を殺したという。
犯人と思われる女性の「親友」だった女性が、真相を知るために色々な人に話を聞いて回るのが第一章。
犯人と思われる女性の語りが第二章となっている。

辻村深月得意の、同じストーリーを重層的に語らせ厚みを持たせ真相へと迫っていく形になっている。しかも現在から過去へたどっていくので、段々と色々なことがわかってくる。
よく『傲慢と善良』とともに語られるのがわかる気がした。

テーマは田舎の生活の狭さ、女性のコミュニティーでの掟、グループ内格差、などなど、確かにこの本を深化させたのが『傲慢と善良』という書評は納得できる。

とにかく一つ一つがよくわかる。表面上は仲良くしているが、学歴によって話が合わなかったり、馬鹿にしたり、敬遠したり、恐ろしい程に表面上の笑顔のしたの人間の醜い部分をえぐり出すような描写の部分がとても共感できた。

p181~
「公立の中学校から先の高校や大学は、自分で選んだ進学先だけあって、私と同じ程度の志向の、似た種類の人間が集まる。学力はもちろん、家庭環境、考える力までが釣り合っていたように思う。
 山梨に戻って、チエミたちと再開したとき、驚かされたのは、彼女たちの圧倒的な関心のなさ、考える力のなさだった。驚かされた、というよりは、思い出した、というべきか。中学校の頃と同じく、自分の身の回りの範囲と芸能ニュースにしか興味がないのだ。
 県議会議員と国会議員の区別がつかず、選挙があってたとえ投票しても、自分が今投じた票が、何を
決めるための選挙なのかがわからない。~中略~景気が悪い、と現状を嘆いていても、その原因がどこからくるのかは興味がない。」

この辺の描写は非常に共感できた。しかし、村上春樹や朝井リョウなどのキザで自意識過剰なエリート意識たっぷりのいやらしい感じではない。どちらが良い悪いではなく、結局どちらも自分の世界の中でしか生きていない傲慢な考え方なのだ、ということをちゃんと提示している。やはり上記の男性作家ふたりと違って、辻村深月は人間全体に対する、人の心に対する優しい視点がある。

長く、結構読みすすめるのがキツイ部分もあるが、名作だと思う。

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Op.043 交響曲第四番 ハ短調  [ショスタコーヴィチ 交響曲]

第一楽章
★★★★★☆☆☆☆☆
東洋風の笛の音と激しいパーカッションの前奏で始まり、これから戦闘へ向かうかのような第一主題が激しく奏でられる。第二主題は少し静か。第三主題は諧謔的に始まるがだんだんシリアスさを増していく。展開部は美しく広がりのある幻想的な雰囲気で始まる。すこし森の中に迷い込んだかのような感じになる。その後軽やかな部分が一旦現れるが、段々と混沌へと向かっていく。ティンパニーの音が静かに鳴り響き、主題へ戻る。最後は静かに終わる。
30分近い楽章で正直飽きる。

第二楽章
★★★★★☆☆☆☆☆
ABABA
A:緊張感を持った弦楽器による静かな雰囲気
B:静かな森の中を描いたような雰囲気

第三楽章
★★★★★☆☆☆☆☆
エキゾチックな静かな始まり。深遠な感じになった後、シリアスになっていく。
突然コミカルになり様々なメロディが流れ出す。
ティンパニーが鳴り響き突然盛り上がる。
最後は深淵に静かに終わる。

長い。
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